日本海東北自動車道 シークエンスデザイントンネルルート/ sequence design / 国土交通省 酒田河川国道事務所
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‖コンセプト‖
2012年春に開通した区間のうち、天魄・あつみ・かたのりざわ・小波渡の連続する4本のトンネルには、 これまでの閉鎖的で暗いトンネルのイメージを一新し、安心で快適なドライブを支援するため、 世界でここにしかない試みとして、ルート全長に走行シークエンスデザインが導入されています。
シークエンスデザインとは、速度をもって道路を走行するときのシークエンス (走り進むにつれ連続的に展開するひとつづきの視環境)を対象にした、時間軸をもったデザインです。 ドライバーが走りやすいよう、ストレスなく自然に道路空間の認知-行為をサポートすることをひとつの目的にしています。
長大なあつみトンネルはじめ、4本が連続する延べ1万2000mを超えるトンネルルート走行では、トンネル内の壁面に、 視覚効果のある進行方向に伸び縮みするストライプ・パターンがデザインされています。 このデザインは単なる美観のためではなく、次のような役割が期待されています。

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‖内と外のギャップをつなぐ‖
繰り返し起こるトンネル内外の光の明暗差は目を眩ませ危険です。 そこで、通過するときに、トンネルの出口と入り口区間が連続して感じられるよう、出入口前後の区間は、 安定して視線をガイドする太く長いラインでドライバーを先へと導くデザインになっています。

‖走行位置のガイドとして‖
どこまで行っても均質で単調なトンネル内の空間は心理的に苦痛でした。
ここでは、ほぼ1kmごとに現れるシークエンスデザインが、トンネルごと、また走行位置によって、 色合いや印象の変化を感じさせ気分転換になります。そして何度も通るうちに、どこまで走り進んだか、 現在の位置の目安にできて安心です。

‖日常の方向感覚の再現‖
走り慣れた国道7号、海岸線のいつもの景色。
地元の利用者の方々は、その景色と方向・位置間隔を身体に記憶しています。 同じくトンネル内にも海側と山側をデザインしました。海側には空と水平線、刻々変化する海の<青>を、 山側にはこんもりとしたシルエットと陽を照り返す並木の<緑>を引用しています。 こうして慣れ親しんだ方向感覚も生かします。

‖トンネルシークエンスの時空間旅行‖
この日本海東北自動車道(温海-鶴岡)開通によって、季節や気候に左右されることのない、 安心で快適なトンネル走行が実現される一方で、私たちは雄大な日本海の風景や、変化に富んだ地形から切り離されてしまいます。
そのことに配慮して、シークエンスデザインでは、この地域ならではのダイナミックな自然景観のエッセンスを、 時速70kmで走り抜ける時間旅行のなかに凝縮させました。あなたがトンネルルートを走り進むにつれて、 その日の気分で、デザインの織りなすリズムが、自然豊かな風景や場面を想起させてくれるかもしれません。 このトンネルルートが地域の方々の毎日の生活シーンとして親しまれ、心のランドマークとなることを、願っています。

 

photo: momoko matsumoto